アルテックランシング 620B / 718A モニター 604-8H|仕様 スペック一覧
ALTEC LANSING 620B / 718A Studio Monitor Speaker System
1945年、世界中で最も著名で、最もプロの現場での実績を上げる同軸型スピーカー604シリーズの初代が登場します。
低域、高域それぞれ独立したマグネットを使用し、ウーファーの中を貫通したホーンから高域を放射するという非常に贅沢な、ある意味理想的な構造。
幅広い周波数のカバーと、ダイナミックレンジ、そしてなによりもこの方式の最大のメリット、点音源による群を抜く定位感がその後の絶大なる信頼感の源
と
なったことは改めて言うまでもありません。
そして、アルテックはこの独自の同軸構造のユニットを「デュプレックス」(Duplex) シリーズと総称していました。
その後も604シリーズは幾度の改良がインプットされて常に時代の要求に応える仕様を発表してきました。
>> 歴代ALTEC604シリーズの詳しい情報はこちらのページへどうぞ!
1978年、アルニコマグネット仕様の最終モデル604-8Hがリリースされました。
ここでアルテックは思い切った「3つの改良」をインプットします。
まずは高域ドライバー802-8Gで採用、実装され、当時のA7やモデル19で実証された「タンジェリンフェーズプラグ」を採用。
元々の構造が高域に802系ドライバー、低域に515系ウーファー、その組み合わせが604の基本となっているわけですが、その最新ドライバーの技術が604にも
インプットされたわけです。
即ち、よりワイドレンジ化が要求されていたなか、高域特性の大幅な性能向上がこれにより実現できたと言われています。
さらに、長年604の「顔」となっていましたマルチセルラホーンを、この時代の最先端技術のひとつとして名高い「定指向性ホーン」、アルテックではそれ
を「マンタレーホーン」と名付け、それに変更しました。
確実な指向性の確保と、音質的には高域の透明感を向上させることに成功しました。
最後に、デュアルバンドイコライザーの搭載です。
従来は高域の「レベル」だけは調整できましたが、構造上どうしても中音域の盛り上がり感は否めず、新型ではその部分のレベルと、ハイエンドのレベルの
2ポイントを調整可能とし、よりフラット指向の音合わせに対応出来るようにしたと思われます。
初代から数えて、なんと30年以上、その画期的、必然的な構造と、ずば抜けた音の良さを追求し続けて、ここで完成形を見ると言っても過言ではないと思います。
しかしながらこのような大掛かりなモデルチェンジでしたが、世界的なコバルト不足から遂にアルテックも磁気回路のマグネットをアルニコからフェライト
へと変更せざるを得なく、604の最終モデルは604-8Kとしてホーン長を短くするなどその対応に追われる形でリリースされました。
少し不思議な点があります。
それは本国カタログ等では「604-8K」の表記なのですが、エレクトリが発行した国内版カタログでは「604-8KS」という表記になっています。
もう一つ、フェライトへの変更を急しのぎ的にやったのでは、あるいは少なくても8Hのライフスパンをもっと長く見ていたのではと思われるふしがあります。
何故かと言いますと、ネットワーク上に「604-8KS」と型番があるのですが、それは「シール」で貼ってあります!
恐らくですが、「604-8H」のネットワークそのものに、「604-8KS」のシールを貼り、できたてのフェライト版ユニットと組み合わせて出荷したのでは、と思われます。
真偽の程は定かではありませんが・・・
<エンクロージャータイプ>
一方、そのユニットを納めたスピーカーシステムとしては、604-8G時代に確立された2つのエンクロージャータイプを踏襲しています。
ひとつは、最初期からの、612A通称銀箱と呼ばれたタイプを仕様変更し、シンプルな形状となった「612C」タイプ。
スタジオモニターの定番的地位を確立したシステムとして名高く、JBLがこの市場に参入するため、ほぼこの大きさと形に合わせてC50SM〜4320〜4330
/4331を投入していくことは有名な話です。
もう一方はより大型化、大容量化された620タイプです。
612ではマッシブな低音感はあるものの、最低域の伸びと低音域の自然な量感の要求から容量約230リットルという大型なエンクロージャーが用意されました。
612のハンマートーン仕上げから一転、ナチュラルオーク仕上げの一般家庭でもすんなりと溶け込む雰囲気を醸し出すことと、オーディオ熱がピークを迎え
るタイミングとも重なり、特に日本では非常に多くのオーディオファンの部屋にも鎮座していました。
8G時代の620Aをオリジナルとして、8H時代の620Bではネットワークが縦型になったことから、ポートが横型から縦型に変更され、全体のバランスをとる
形でマイナーチェンジされました。
なお、このタイプからサランネットを止める6カ所の取り付け方法が突起型に変更されています。
さらにフロントバッフル面及びサランネットをブラック仕様とした718Aタイプも発表され、精悍でクールなイメージに仕上がっていました。
本国ではMODEL18という品番でホームユースシリーズとして発表されていました。
その後ユニットが604-8Kのフェライトタイプにモデルチェンジした際も620Bタイプは継承され、型番は620Cとなりましたが特に変更点はなかったと思われます。
ただ、その後エンクロージャーは620Jという型番に変更(612Cは612Jに)されるのですが、どうやら国産箱になったのではないかと思われます。
見た目で解る点があり、サランネットが4点止め式となっています。
輸入元がマークフォーオーディオジャパンに変わった後かと思われますが、この件について言及している書面等はみたことがありません。
少なくても1993年〜1995年の国内カタログではスピーカーシステムとして620Jモニター、コンポーネントが604-8K / 620Jの表記となっています。
<純正エンクロージャーと国産等非純正エンクロージャーとの見分け方>
1. 上部写真にありますように、エンクロージャー正面には隅に6カ所、サランネットを取り付ける為の穴が打ってあります。
純正以外では4カ所が殆どで、なかにはマジックテープ式のものもあります。
2. ユニット真下には幅7cm弱長方形横長のアルテックマークの入ったシールが貼ってあります。
※ブラックタイプの718Aは貼ってありません。
3. 純正サランネット右下部には、円形のアルテックロゴバッチが付いています。
<追記>
そして驚くべきことに、GPA社より、「604-8H-II」が市場に出されました。
ALTECの天才エンジニアと言われたビル・ハニャック氏は、最終的にフェライトマグネットとなった604-8K及び8Lには満足していなく、史上最高の604を作
りだそうとALTECの他のエンジニア達も引き連れてGPA(グレートプレインズオーディオ)を興しました。
彼らのなかではやはり、既に604-8Hで完成されたという意識と、それが過去最高の音だという認識で、フェライトでもここまで出来るというエンジニア魂を
その
型番「604-8H-II」で表現したかったそうです。
長年604-8Hを愛用してきた私としましては大変嬉しく思う次第です。
さらに2009年、その604-8H-IIは改良されて604-8H-IIIへと進化しました。
その「顔」であったマンタレーホーンががらりと変化し、8Gまでのマルチセルラタイプの大きさにまで小型化してます。
現在でも、歴代の604シリーズは専門誌等での試聴用ユニットとしてその活躍を見る事があります。
また、近年は中国における富裕層の間で、かなり活発な取引がされているとも言われています。
以下、永遠の名機アルテック604-8Hを搭載し、初期からの定番的エンクロージャーから、より低域の量感を出す為に開発された大容量エンクロージャー620
タイプと組み合わせたシステム、620Bモニターの仕様を、ステレオサウンドさん、実際のカタログ等からの引用にてご案内させていただきます。
ALTEC Professional Monitor Speaker Systems
620B Monitor / 718A Monitor
再生周波数特性 | 20〜20,000Hz |
許容入力(連続プログラム) | 65W |
VCインピーダンス | 8Ω/400Hz |
出力音圧レベル(新JIS) | 103dB/400Hz |
クロスオーバー周波数 | 1.5KHz |
外形寸法(H×W×D mm) | 1,020×660×460 |
総重量 | 68.5Kg |
ボックス | 620B / 718A |
使用ユニット | 604-8H デュプレックス |
最低共振周波数 | 30 Hz |
口径 LF | 15インチ |
口径 HF | 2.25インチ |
マグネット LF(磁束密度) | アルニコV 13,000 gauss |
マグネット HF(磁束密度) | アルニコV 15,500 gauss |
ボイスコイル LF | 3インチ エッジワウンド コッパーリボン |
ボイスコイル HF | 13/4インチ エッジワウンド アルミニュームリボン |
ホーン | コンスタントダイレクティヴィティ マンタレイ 60°H×40°V |
バッフル開口径 | 35.9cm |
ユニット外形寸法 | 40.6cm×28.3cm |
ユニット重量 | 15.4kg(ネットワーク含む) |
*718Aはバッフル面がブラック仕様で、本国では、MODEL 18の名称で主にホームユースとして販売された
(画像は当時の株式会社エレクトリ様カタログより)