理事長挨拶

ごあいさつ

皆様には当会のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。
鎌倉風致保存会は、鎌倉の自然の風光と豊かな文化財を後世に伝えることを目的として1964年(昭和39年)に設立されました。

設立の契機となったのは「御谷(おやつ)騒動」といわれる市民運動でした。これは、鎌倉の聖域である鶴岡八幡宮後背山林の宅地造成計画に反対した運動で、御谷の住民をはじめ、鎌倉市民、市在住の文化人など多数の人々が鎌倉の自然と風致を守ろうと運動に参加しました。作家の大佛次郎さんは「怒る権利」、「破壊される自然」等のエッセイを新聞に発表し、新聞各紙が運動の様子を取り上げるなどしたため全国的な関心を呼びました。その結果、財団法人鎌倉風致保存会が設立され、全国から集まった寄付金等によって御谷の1.5haを買取り保全することに成功したのです。
当時は戦後の高度経済成長期であり、自然と文化財が一体となった「景観」という考え方に乏しく、そのため英国のナショナルトラスト運動を範に、寄付金によって保全したい場所を買取るという手法をとりました。こうしたことから当会は日本最初のナショナルトラスト団体と呼ばれています。

その後、鎌倉風致保存会の活動をきっかけに同様の問題が起こった京都や奈良とともに、古都の景観を乱開発から守る国会の超党派の議員立法として「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(古都保存法)」が1966年(昭和41年)に制定されました。

現在当会では、御谷を含め4か所の緑地(御谷山林、笹目緑地、十二所果樹園、旧坂井邸庭園)約8haと旧坂井邸建物(1927年(昭和2年)建築の洋館・和館あわせて約380㎡)を所有し保全管理しています。旧坂井邸の建物は、国の登録有形文化財に指定され、洋館は鎌倉風致保存会の事務室、会議室として利用し、和館は活用に向け茶室や和室を整備しながら修繕を行っています。
また、大佛次郎茶亭の保全に助成し、鎌倉市内の史跡や寺院の後背緑地の管理にも協力し、さらに後世に伝えるため、若い世代に向けて「かまくら里山フェスタ」や「中学生ボランティア」などいろいろなイベントを開催しています。

そしてこうした活動のほとんどが、会員や市民、鎌倉を愛する方々の地道なボランティア活動によって支えられています。ボランティアの方々の熱意とたゆまぬ努力を皆様に知っていただき、さらにいろいろな世代や関心の対象として、当ホームページをご活用いただければと思います。また、ぜひ当会のイベントやボランティアにご参加いただければ幸いです。
鎌倉の自然と豊かな文化財を守り伝えるために今後とも、ぜひ皆様のご指導、ご協力、ご支援をお願い申し上げます。  

公益財団法人鎌倉風致保存会 理事長 兵藤 芳朗