鳥人幸吉伝
・・・空にあこがれ鳥になることに一生をかけた男の物語・・・
第5話 初飛行への挑戦
それからは、幸吉は仕事が終わるや否や、店の二階の自分の部屋で、筆を持ち帳面を広げて翼の設計を始めた。当時の住込み職人の労働時間は、明五ツから七ツ過ぎ (午前8時から午後7時)までであったので、幸吉が飛行の研究と設計に当てるのは、当然夜である。幸吉は少しでも研究時間を確保するために、与えられた表具師としての仕事は今まで以上に真剣に行ない、より手早く正確に仕事をすることに心がけた。このお陰で、今まで以上に幸吉の腕の良さは評判になり、親方である伯父の万兵衛も幸吉は自慢であった。万兵衛は幸吉が夜更かしをし何やら研究していることは薄々承知していたが、仕事をきちんとし出来映えも良いので、何も口出しはしなかった。 |