【ストレススキン翼の設計・製作上の注意点】
ストレススキン翼の仕上がり状況
(スキンの反射からスキンの滑らかな仕上がりが解る)
(1)汎用パイプ翼との比較
主翼の完成重量は、15.44kg(リフトワイヤー含まず、単位面積重量;0.96kg/u、単位長さ重量;0.59kg/m)です。汎用パイプ翼と比較しますと、単位長さ重量は概ね同じですが、単位面積重量が約1.5倍になっています。これはアスペクト比が汎用パイプ翼の1.5倍に対し、面積が2/3しかない事によります。私達の試算では、汎用パイプ翼で本機と同等の剛性を確保しようとすると、重量が160%にも達しました。重量の比較もさることながら、決定的な違いに表面の仕上げ精度の飛躍的向上が有ります(凹凸±0.2mm以下)。
現在の私達の設計・製作技術を用いて、ストレススキン構造を採用し、軽量化の効果が望める(=高い構造効率が望める)のは、翼弦長が概ね1m以下の主翼の場合だと考えています。
左・主翼の組み立て状況 右・主翼裏面のプランク
(2)設計上の注意点
ストレススキン構造を採用する主翼は、左右各々1対の構造とするべきです。やむを得ず製作や運搬の問題で接合部を設ける場合は、その部分の応力伝達方法が設計・製作上の重要なポイントになります。接合部を設けると、その部分でスキンが不連続になりますから、捻り応力の伝達経路が変化します。パイプ翼機のような差込式の接合方法は採用できません。私達の場合は、スパーと前・後縁に配置したステーによって捻り応力を伝達する方法を採用しました。捻り応力による剪断力の増加に充分な配慮が必要です。スキンが連続している部分は、スパーは曲げと剪断応力を負担していますが、接合部では捻り応力による剪断力が増加します。スキンからスパー、ステーに伝達し、接合部を経て、ステー、スパーへと応力伝達が滑らかに行われる工夫が重要です。ストレススキン構造の採用に当たっては、計画・設計段階から接合部の充分な検討が重要と感じました。
左・主翼の仕上がり状況と接合部 右・主翼接合部のアップ
(3)製作上の注意点
製作上の注意点に関して、スキンの製作でGFRP加工技術に難点が多い事が有ります。試験体を作って加工・製作の練習が必要です。私達は、リブを組み立てスチレンペーパーをプランクした後、主翼全体をサンディングし、その上にガラスクロスを敷いて、レジンを吹き付ける方法を採用しました。GFRP加工に用いるレジンは、スチレンペーパーを溶かさない溶剤を選定し、吹き付け可能な濃度に稀釈して用いますが、吹き付け厚さと重量の管理手法がポイントです。
左・サンディング 右・ガラスクロス配置
[表面の高精度化と軽量化のポイント]
(ポイント−1)プランクが終わり、スチレンペーパーの後縁を取り付け、プランクしたスチレンペーパーの表面をサンディングします。この作業で、主翼表面の凹凸を、±0.2mm以内に整形・仕上げる事がポイントです。
(ポイント−2)GFRP加工では、メタノールで稀釈したレジンを吹き付けました。吹き付け完了後に余分に吹き付けたレジンをペーパータオルで拭き取ります。同時に、スチレンペーパーとガラスクロスの間の空気を脱泡し、クロスの繊維の乱れを調整します。余分なレジンのふき取り作業が軽量化のポイントです。
左・レジンの吹き付け 右・余分なレジンのふき取りと脱泡