木炭デッサンについて
デッサンについて
造形表現の基礎といえばデッサンです。
「デッサンがしっかりしている」といえば描画技術の基本ができているという意味で使われるほどで、何事においても基礎訓練は欠かせません。
ものの形体・明暗・質感などを線描で正確に捉え表現するデッサンの訓練を通して構図、調子などについて理解を深め、「ものを観る力」、「表現する力」を養うことができます。デッサンを繰り返し練習することによって、油絵・日本画・彫刻・デザイン工芸等どんな造形分野にも通ずる感性と表現力とが磨かれます。
木炭デッサンの特長
木炭デッサンといえば、石膏像の様式的なデッサンを思い出します。もちろん石膏デッサンは美術入門には欠かせないひとつの方法で、画用木炭の大切な分野でもあります。
この初歩の描画技術の訓練に木炭が用いられているのには、木炭によるデッサンの次のような特長によるものと思われます。
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描いたり消したりするのが簡単である
たやすく消すことができるので、何回も描いたり消したりしながら現れては消え、消えては現れるフォルムを追求するのにふさわしい材料です。
また、短時間でのデッサンには最適といえるでしょう。 -
モチーフを線より面で捉えることに適している
最初は細部や正確な輪郭線にこだわらず、対象を面で捉え全体のフォルムを明暗で表現することに習熟することがデッサン上達の近道です。 -
調子(トーン)の表現に優れている
軟らかく伸びがよいので濃淡の表現がしやすく、明暗のコントラストで光と影の調子を表現するのに優れています。濃淡の変化の美しさは他の材料では代えがたいものがあります。
木炭デッサンに親しむことにより、パステルや油絵など他の描画材料による表現のための基礎的な技術力を養うことにおおいに役立ちます。
画用木炭の選び方
画用木炭を代表する木炭といえば古来よりヤナギ炭である。
軟らかく、きめこまかく、しっとりとして伸びがよく消しやすいという特徴が好まれてきました。細軸、中軸、太軸と様々な太さのものがありますが、初心者はヤナギの中くらいのものを選び、十分使いこなして木炭の扱い方に早く慣れることが大切です。
広い面積を描くには太いもの、細部の処理には細いものを揃えておくと便利です。
ヤナギ炭のほかにクリ、カバ、ハン、ホウ、ミズキ等など様々な材料の木炭があります。
それらは硬軟、濃淡など描き味、色合いに特色のあるものが選ばれています。たとえばカバ、ミズキなど硬い木炭は鋭角的な表現に、淡色の表現にはホウ炭等が適しているなどといえます。これらの木炭を組み合わせて使うことによって、調子の表現の幅を広げることができます。
木炭の良し悪しはその樹木の種類によるものではありません。悪い木炭といえば、硬すぎて紙が破れたり,節が多いとか、ボロボロ折れやすいなどといったことがあげられますが、それは材料の選別やその焼き具合によるものです。
いろいろと試してみることによって、自分の好みにあった色合いと描き味の木炭をお選びになることをお薦めいたします。