1.はじめに
平成9年6月に私達は、視覚障害者が安心して歩けるように、誘導する方法を分かりやすく説明したビデオ「目の不自由な人の“目”となってください」を制作しました。
そして、新潟県内のすべての小・中・高校にお送りしたところ、生徒達に教える場合、誘導の要領などを書いた本があったら、いっそう教えやすいとの声が先生方から沢山いただきました。そこで、ビデオの不十分な点を補い、誘導歩行の要点を文字にしたのがこの小冊子です。ビデオと合わせてご利用いただければ幸いです。
なお、この小冊子を作るにあたり日本財団より多大のご援助をいただきました。深く感謝申し上げます。
2.目の不自由な人について
全国の目の不自由な人(視覚障害者)の数は、現在およそ35万人といわれています。しかし、実際はこの数倍とも考えられています。
そのうちの2割の人は幼くして失明した先天盲の人達で、盲学校へ通って点字や杖(つえ)歩行を教わり、職業を身につけている人が多くみられます。
8割は大人になって失明した人で、いわゆる中途視覚障害者といわれています。中途視覚障害者は、先天盲の人達にくらべると、歩行訓練や点字学習の機会が少なく、また失明する年齢が働き盛りに多いため、離職などによる経済的危機が大きいようです。同じ目の不自由といっても、悩みはそれぞれに異なります。
目の不自由な人達が日常生活でとりわけ困ることは、外出や室内の移動、新聞を読んだり文字を書くこと、調理や買い物などです。
以前から目の不自由な人は点字を用いていますが、現在はこれらの人の中でも点字の読める人は1〜2割といわれています。また、白い杖(白杖
)の使用法を教わって用いている人は少なく、不安な気持ちで歩いている人が多くみられます。
3.誘導歩行の必要な理由
以前は、目が不自由でも一人で歩ける人が少なくありませんでした。しかし、最近の車の増加は、目の不自由な人の一人歩き(単独歩行)を困難にしています。また、歩道に商品や自転車が置き去りにしてあると、いっそう危険です。
一人歩きが危険を伴うために、外出したくても控えている人が、失明した人の50%、弱視の人の32%にみられます。一人歩きがどのくらい恐いかを知るために、私達は血圧を測定して調査したことがあります(図1)。
アイマスク(めかくし)をして目の見える人(晴眼者)に誘導してもらっている時の血圧にくらべ、一人で歩く時には緊張して、血圧がおよそ30ミリ上昇します。中には100ミリも上昇する人もあります。このような血圧の上昇からも、一人歩きがいかに心理的にストレスが大きいか、おわかりいただけることと思います。 目の見える人の中には、ふだん一人で外出できる目の不自由な人には、誘導する必要はないと思っておられる方があるかもしれません。しかし、たとえふだん一人で外出する人でも、初めての道や危険な場所では、失明した人の78%、また弱視の人の66%が、目の見える人から誘導してもらうことを希望しています(図2)。 |
なかでも、目の見える人に誘導して欲しい場所は、交通信号のある場所や十字路が最も多く、ついで、電車やバスの乗り降り、駅、トイレです(図3)。 これらの場所は、目の見える人でも危険なことがありますから、目の不自由な人にはいっそう恐いと思われます。このような場所で、目の不自由な人が不安そうにしている姿をみかけたら、“誘導をしましょうか”とか、“お手伝いしましょうか”と声をかけてあげてください。 |