蒸気機関車全盛期の昭和初期から昭和20年代だと考えられます。
この時期、日本は中国東北部に鉄道の運営権を持っており南満州鉄道
と云う鉄路を作った事があります。

日本が中国東北部に新たな国を作りこれを支配下において植民地化す
る計画のなかで広い中国大陸での最大の輸送手段として出現した不幸
な生い立ちはありますが、蒸気機関車の性能としては世界のトップクラス
に数えられる性能と当時としては斬新的な流線型の車体とライトブルーの
塗装、また、客車も大変素晴らしく全体に”丸みを帯びた”形状とダーク・
グリーンの車体・最後尾の密閉式展望車両と編成全体が大陸鉄道にふさ
わしい姿でした。

「あじあ号」の編成は郵便荷物車、3等車、3等車、食堂車、2等車、1等
展望車の6両編成で、蒸気機関車牽引ではありますが客車内は冷房が
完備されていました。
これは、当時の最高の技術水準を結集して発生した蒸気を利用して真
空を発生し、減圧下で水を蒸発させて10℃の冷水を作る方式を採用し
ての冷房が3等車を含む全車両(郵便荷物車を除く)に完備していました。

因みに、日本国内で全編成エアコン完備の客車が出現するのは24年後、
1958年の20系「あさかぜ」まで待たなければなりません。

開業は、1934年11月1日と云われていて大連−新京間で701.4Kmを平
均時速83Km、最高速力110Km、8時間30分で結ぶ特急運転を開始した
ました。
「あじあ号」を牽引した蒸気機関車は当時の日本の鉄道技術の”粋”を結
集して計画から実施まで僅か1年半と云う短期間で完成させ、設計速力
は150Kmを目標に計画されました関係から、動輪直径2mが採用されま
したし、この動輪直径は現在でも世界一の大きさで、最高時速は110Km
とも120Kmとも云われ東洋一の驚くべきスピードで走らせる事に成功した
蒸気機関車でした。

流線型車体は当時、蒸気機関車には採用されていない時代ですから流
体力学的な基礎研究が東京大学航空研究室で航空用風洞を使用して始
められ時代でしたから、如何に斬新的だったかお解り頂けると思います。

南満州鉄道に採用された蒸気機関車はパシフィック型、軸配置2C1形式
7番目の機関車という意味で略称パシナと呼ばれていました。

特急用の大型機関車として昭和9年(1934年)から満鉄沙河口工場と川崎
車両で12輌製造されました.
参考にSL7(パシナ)型の諸元を表にしておきます。


        SL7(パシナ)型諸元
軸配置 4-6-2 付熱全面積(m2) 379.64
機関車運転重量(t) 119.20 水タンク容量(m3)    37.0
炭水車運転整備重量(t) 84.11 燃料搭載量(t) 12.0
軸重最大(t) 23.00 缶中心線高(mm) 3,150
動輪直径(mm) 2000 全長(mm) 25,675
シリンダ、直径×行程(mm) 610×710 全高(mm) 4,648
缶圧力(kg/cm2) 15.50 機関車長(mm) 15,510
火格子面積(m2) 6.25 炭水車長(mm) 10,165

実車は、現在「パシナ」SL751号機が中国・瀋陽鉄路蒸気機機関車陳列館
の一角に、復元されてブルーの流線形の車体を静かに横たえています。
1985年(昭和60)当時現存していた3両からの部品を集めて、動態保存を目
的に復元工事が中国で試みられましたが、残念ながら老朽化が酷く本線走
行が出来るまでには至りませんでした。


此処で、御紹介している編成は平成13年にマイクロエースから発売された
Nゲージ木箱入満鉄パシナ979(7両)・木箱入満鉄パシナ981(8両)の2種類
がモデル化された物です。

パシナはさすがにD51と比較しても、一回り大きく模型の世界でも当時の素
晴らしさが伺えます。
走行性能は、マイクロエースとしては良い方でしょう。
ただ、説明書にも書いてありますが客車の大きさも大陸設定ですから、国
内車両の20m級に比べて一回り大きいため、レーアウト内での走行はカー
ブが少しきつい関係で回りのストラクチャーが邪魔になるかもしれません。


保存用木箱の表面

保存用木箱の表面


満鉄パシナ981あじあ号8両セット


満鉄パシナ979あじあ号7両セット

満鉄パシナ979号蒸気機関車とD51
蒸気機関車蒸気機関車(KATO)を並
べた写真ですが、パシナの方が一回り
大きい事に気が付きます。
本当はC62と比較すれば良いのでしょ
うが表情的には殆ど変わりません。
パシナは蒸気機関車本来の姿の上に、
流線型のカバーを掛けている関係でメ
ンテナンスが面倒だったと聞いています
が、高速走行には空気抵抗を減らす役
目と見た目のスマートさから大陸では、
キット全体は小さく見えた事と思います。












     亜細亜号編成(マイクロ・エース)